先日、米国PMIの発表がありましたが、数字が芳しくなかったため、いよいよ市場は景気後退(リセッション)にシフトしつつあります。
景気後退局面において、通信株のような景気に左右されない安定した事業は設備投資が少なく配当で株主還元もあり人気が出る傾向にあります。近年では5Gの基地局の整備で投資が増えましたがネット社会の現代では通信は重要な社会インフラの一つであるため、安定事業は揺るぎないものになってます。
日本でも楽天が通信事業に参入しましたが、基地局の整備に莫大な資金がかかり、楽天のクレジット部門や銀行、証券部門の利益を圧迫しているのが現状です。言い換えれば、参入障壁が高いため、ライバル企業が少なく寡占市場であるとも言えます。
今回は米国通信大手3社のベライゾン(VZ)、AT&T(T)、T-Mobile(TMUS)について比較していきます。
株価とバリュエーション
ベライゾン(VZ)
- 配当利回り5%
- 予想PER9.5倍
AT&T(T)
- 配当利回り5.3%
- 予想PER8.2倍
T-Mobile(TMUS)
- 配当利回り 無
- 予想PER39.1倍
ベライゾンのみ年初来マイナスでAT&TとT-Mobileは厳しい相場環境でも年初来プラスになっており市場をアウトパフォームしています。しかし、AT&Tは長期チャートで見ると下落トレンドであり、配当とPERだけ見るとベライゾンと似ています。
一方でT-Mobileは配当が無く高PERですが、年初来のパフォーマンス高く、他の2社とは違った特色があります。
各社の決算傾向
ベライゾン
- グロースはほぼ無い、netの後払いのモバイル契約者はYoYでは上昇しているがQoQでは減少
- 営業利益率22.8%と高い利益率が魅力
AT&T
※AT&Tは今年3月に不採算事業であったメディア事業のワーナーブラザーズをスピンオフしているため、通信事業のみで抜粋しています。
- 売上に大きなグロースはないがnetの後払いのモバイル契約者はYoYで16%上昇、加入者という面においてはベライゾンより成長している
- 営業利益率13.1%とベライゾンと比較して配当利回りが高い割には利益率が低い
T-Mobile
- 売上のグロースはYoYで2%とPER39倍もある企業としては物足りない数字
- 加入者数も成長しているものの大きなグロースはない為今後は既存顧客に対して顧客単価を上げるかにシフトしている(ハイスピード回線の拡充)
- 営業利益率8.2%と上記2社よりも圧倒的に低い
補足
米国における5G普及率
5G coverage compared
Carrier Nationwide 5G coverage T-Mobile 53.79% AT&T 29.52% Verizon 12.77% U.S. Cellular 1.8%
引用 https://www.whistleout.com/CellPhones/Guides/5g-coverage-maps-compared
T-Mobileが圧倒的に早く、ベライゾンは遅れをとっています。
しかし現状大多数の一般人が5Gを必要するサービスを利用する機会が余りないため、個人的には現時点での大きな優位性にはならないかなと考えています。
まとめ
景気後退での買い判断になるとベライゾンとAT&Tになるかと思います。ただし、AT&Tはメディア事業の失敗で更なる減配の可能性があるため次の決算も見てからでもいいかなとは思います。
T-Mobileは営業利益率が低く今のような決算が続くようであれば高PERを維持出来なくなる可能性が高いため買いではないと思います。